長走川、実川溯行

二つの河川を調査せよ

というわけで、行ってこい

夏の遡行の事前調査です

雪ありますよね?寒いですよね?水ちべたいですよね?一日で二カ所ですか?嘘ですよね?
鬼軍曹の言葉に私と深沢君は唖然。でも鬼軍曹こと人見氏も一緒なので、不公平ではないか...

DSC_0050.JPG

もちろん出発は夜中です

AM2:00 集合 出発。急ぐ!急ぐ!法廷速度内で急ぐ。なんとも忙しい出発となったが、朝方薄曇りの太陽とともに到着した。今回の目的は三つ。夏の遡行に向けて現状の雪渓の量、テン場の状況、河川の状態を把握する事だ。今年の雪の量を考えると雪渓はまだまだありそうである。雪崩や崖崩れも予想出来る。状況次第では対策を考えなければならない。とりあえず長走川。ここで宿泊の予定はないので空身で出発。ハイスピードで目的地に向かう。

そりゃ冷たいさ

初夏の候 いかがお過ごしですか?そろそろ蒸し暑い夏がやって参ります。
暑さに負けぬようお互い気をつけましょう•••••••
6月の季語を考えたのはいったい誰だ。初夏ってなんだ?筋肉が硬直して、次の一歩が出ないじゃないか。股下まで水に浸かったら足の感覚がないじゃないか。早く陸にあがりたい。こたつに入ってニャンコのおなか触りたい。

だがしかし調査隊には任務がある

そうだ我々には、重要なミッションがあるのだ。夏の遡行を迅速に安全に遂行させるために、出来るだけ情報を集めなければならない。鬼軍曹もいる。泣き言は許されない。ここは平気な顔で男をみせなければならない。冷たい雪と戯れて、満面の笑みで、いや作り笑いで軍曹にアピールだ!

DSC_0008.jpg

DSC_0010.jpg

愕然

現状は想像を超えていた。テン場は半分以上流され、とても使える状態ではない。倒木に流木、立派に育ったブナの木などが見るも無惨な状態だった。自然は私たちの生活を大きく支えてくれるが、時に恐ろしく残酷だ。山々の木々を愛でる我々の心を柔らかく包んでくれる事もあれば、時に怒り狂ったような雷を放つ。
自然と共になどと都合の良い考えは思い上がりなのかもしれない。我々の考えが追いつきもしない所で、自然は動いているのだ。

DSC_0004.JPG

釣り忘れてました

そうだ、我々は岩魚釣りの会なのだ。釣りをしないと。さっさと釣って写真とって、この寒さからとっととおさらばしたい、いや先に進んで調査を続行しなければならない。

はい、完了

今回も岩魚を食べる予定はないので、すぐにリリース。早く写真撮りたかったので陸にあげちゃった岩魚ちゃん、ごめんなさい。次は切り刻んで胃袋に....

放流活動をとおして、今となっては非常に貴重な岩魚たちを、なんとか増やせないかと努力してきた(先輩たちが)。私たちはそれを食べるが、むやみに殺したりはしない(岩魚の刺身大好き)。賛否両論あるだろうし、正しい事だとも言わない。しかし岩魚が大好きで大切に思っている事も知ってほしい。

DSC_0028.JPG

DSC_0089.JPG

釣りを楽しみながら

先へ進んでいく。水の冷たさは相変わらずだが、釣りをしていると忘れてしまう。曇り空ではあるが本流は開放感があり、竿を出してる時の心地よい緊張感は釣りならではだろう。
岩場を上り、落差がある水の音を聞いていると、ゴミが溜まった頭の中に掃除機をかけているみたいだ。

竿をたたんだら

急に眠気が襲ってきた。それはそうだ。昨日は仕事が終わり、準備をしてそのまま集合場所へ。鬼軍曹が仮眠という言葉を知っている訳がない。これから次の川へ移動して、また釣り上がるなんて言ってるんだから頭がおかしい。早く空まで覆い尽くすような雪渓に出くわすか、熊でも出てこない限りは戻れやしない。どうしたものか。そうだ!いっそ上から巨大な岩でも落として軍曹を…..

いやいやそれはいかん。軍曹には実際世話になっている。たくさん色々な場所に案内してもらい、山や溪のことを一から教えてくれた。毎週のように山菜だのきのこだの釣りだのと散々連れ回されて、おかげで重いザックも背負えるようになり、岩場もだんだん怖くなくなってきた。泣き叫ぶ私に無理矢理ロープを結びつけ、行ってこいと崖から突き落とされ…


やっぱりこの一番でっかい岩を.....

DSC_0052.JPG

DSC_0053.jpg

これはすごい

なんとか睡魔に打ち勝とうと妄想して歩いていると、やっぱり出てきた。巨大な雪渓だ。今にも崩れそうな雪渓からは、軍曹の冗談のような今にも凍り付きそうな冷気が漂う。

大魔王出現

これから先へは進めない。大魔王の吐息が濡れた足下に吹きかかる。寒い。もっと先に行きたかったが非常に残念だ。「やったぞこれで戻れる」という心中を軍曹にひた隠しにして、記念撮影。
ここで引き返し、実川へと向かう。

DSC_0015.JPG

DSC_0027.JPGDSC_0024.JPGDSC_0022.JPG

移動中

あまりの眠さにうとうとする。行った事がある人なら分かると思うが、この川まで来る道は半端じゃない。崖崩れに土砂崩れはあたりまえ、ごつごつした岩の上を進まなければならない。WRCのグラベルなんてただの高速道路だ。しかし睡魔とは恐ろしい。この道で人間は寝れるのだ。
 途中「テン場、直しにこなくちゃな」という軍曹の言葉に「誰が?」と思いつつ軽く無視して実川に向かう。

到着 あれ?実川じゃない

私の知る実川はこうじゃない。ゴルジュの連続に、暴れる竜のような水量。足を滑らせたら死を覚悟すべきだと思っていた。しかし今日は渇水。極端に水が少ないのである。実川地獄の門も今日はひっそりとなりを潜めている。ここは私は写真でしか見た事がなくぜひ一度来てみたいと思っていた場所だ。水は少ないにしてもやはり大きい岩壁は迫力があり、違う世界のようだ。景観をじっくり眺めながら、穏やかな溪での釣りを楽しんだ。

DSC_0063.JPG

DSC_0064.jpgDSC_0075.JPGDSC_0080.jpg

さすがに限界

今日は実川に泊まりなので、なんとか歩いて小屋まで到着。着いたら私は倒れるように眠ってしまった。その間に軍曹は私たちの夕食の準備をしてくれた。なんだかんだ言ってもやっぱり頼れる人だ。しかし道中すべて軍曹が運転。どうかしてる。
 きっと軍曹がいつも読んでる山野草の本には、色んな薬草が出てるんだ。とてつもない薬を調合して、密かにドーピングしてるに違いない

DSC_0038.jpg

夕食後は

写真を撮る気力もなく朝まで眠ってしまった。身体の疲れで最高の睡眠がとれたせいか、朝の光がいつもより気持ちよい。
夕食の写真が撮れなかったので、朝食はしっかり撮らないと軍曹愛用のザイルで恐怖の特訓「地獄の源流縛り」をくらってしまう。なんとか良い写真を撮らないと。

山菜ずくし

岩魚は確保していないので、今日の朝食は釣りしながら採ってきた山菜がほとんど。肉や魚はいっさい使わない健康料理。またこの山菜の香りが最高なのだ。
さっそく山菜の調理にとりかかる。山ウド、モミジガサ、コシアブラ、ワラビと次々に料理していく。同じ山菜でも調理方法でまったく違う食感の料理が出来る。
山菜ずくしに、ごはん、パスタが加わり完成。ブナの原生林から指す光をおもいっきり浴びながら、最高の朝食をむかえる。

あれ?トマトがあるぞ。

今日は持ってきてないはずなのだが...
軍曹は先週のトマトをザックにいれっぱなしだったらしい。大丈夫なのかこれ?
超熟トマトを食べる軍曹は満面の笑み。まったくこの人は...
おいしいなぁ
やっぱりうまいなぁと、しみじみ思う。またこのロケーションも最高だ。あっと言う間にたいらげてしまう。

DSC_0108.JPG

DSC_0102.jpg

DSC_0094.JPG

DSC_0097.JPG

DSC_0092.jpg

調査隊任務終了

今日は釣りの予定がないので、まだ数時間の歩きはあるが無事終了。帰り支度を整える。5月からずっと曇り空で寒い遡行が続いたが、今日になって久しぶりの晴天。これなら歩くのなんて全然楽しい。鮮やかに芽吹いた木々を見ているだけで心が落ち着く。
なかなかカメラの腕はあがらず、思ったような写真は撮れないが、なんとか軍曹の「源流縛り」は避けられそうだ。

怪我もなく無事に帰れる事を山の神に感謝し、一同帰路についた。

DSC_0117.JPG