飯豊連峰実川溯行

自然の要塞に阻まれた岩壁の砦 実川魚止めを攻める

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いざ魚止めへ

遡行装備最終チェック 準備OK

というわけで始まりました。夏のビッグイベント 実川魚止めを目指します。何はともあれ、真夏の炎天下に要塞攻略ですから重要な装備を紹介します。最近カラフルでファッショナブルな登山者をたくさん見かけますが、源流会はひと味違います。夏期特別仕様モデル!コンセプトは 夏でも男は黒で魅せる••• 源流のアルマーニ
どう見ても「カッパ」だろという意見はさておき「アブ対策」です。これがないと全身見るも無惨な姿で帰る事になるでしょう。しかし炎天下にカッパです。どなたかメタボリックでお困りの方はぜひ一緒に遡行に出かけましょう。源流会特別プログラムであっという間にスリムな身体が手に入ります

全員源流スーツに着替えたところで

出発です。基本川伝いに上がるのですが、私は初めての実川上流部なので、人見氏と相場氏の判断で危険な箇所は溪を巻いて崖を登り、上流部へと進みます。源流スーツに過激な運動で流れ出る汗が身体にまとわりつきます。せめて顔だけでも汗を拭いたいのですが、立ち止まってかぶっている網をとればアブの大群です。例年よりアブは随分と少ないという話ですが、「いやいや大群ですから」と心の中だけで叫び、黙々と歩き続けます。 厚手の源流スーツに網をかぶり、暗い薮の中を歩き回ると閉塞感がたまりません。「何してるんだいったい」とさえ思う事もあります。立ち止まるとアブがまたべったり。なんとか溪に降りた時には新鮮な空気を吸い込み心を落ち着かせます。

その瞬間 アドレナリン爆発

川を見下ろして叫んだ相場氏を全員が一瞬で理解しました。岩魚です。見るとエメラルドグリーンに光る水に悠々と泳ぐ姿が。これです。この瞬間のために我々は来るのです。すぐさま竿を用意し、全員緊張の面持ちで見守ります。先ほどまでの道中の暑さやアブなんて頭の片隅にもありません。
見える魚を釣るというのも面白いものです。みんなで「よし食いつけ」などと話してるのがたまらなく楽しい時間です。
そんな私たちに気づいたのか、岩魚は岩の陰に消えていきました。

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ふと溪を見渡せば

なんとも美しい溪じゃありませんか。ここで魚が釣れなかった事などどうでもいいのです。みんなで「あの岩魚大きかったな」「あはは」などと会話することもまた楽しいんです。

そんな会話をしている時に

ある事に気がつきました。立ち止まって空を見上げる相場氏。「なんか雲が出てきてるね」たしかに先ほどまでは太陽が照りつけていた水面も少しずつ暗くなってきました。この河川に限らず、源流の遡行は天候の変化を瞬時に読み取らないと、かなりの危険があります。川を渡れなければ当然帰れません。雨が降ればあっというまに数メートル水位が上がるのが常識。本格的に釣り支度をして夕食の確保をするか、魚止めまで一気につめるか。選択を誤ると命の危険さえある川だけに、慎重に考慮します。

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魚止め 断念•••

今回は魚止めを目指すという事で遡行が始まった訳ですが、天候を熟慮した結果です。この的確な判断のために数々の危険は経験したものの、大きな怪我や死者を出さずにやってこれたのだと思います。経験が浅い者にも細かい安全確保の配慮があり、私も助けられた経験があります。天候の変化は仕方のない事ですから、残念ですがまた来年の楽しみが増えたと思えばそれはそれで良いでしょう。

そうと決まればする事は一つ

釣りましょう!今日のおかずを!さっそく本格的な釣りの準備をし、ポイントを探ります。先ほど岩魚を確認しているだけに俄然やる気が出てますから、それぞれ願いを込めて竿を出します。
意識は川の流れのその奥に、ハリスから竿に伝わる感覚はそれを握る手と一体化していくのです。ピタリと止まる糸の先を感覚で掴む深部は岩魚との格闘の瞬間。眼では追えぬその内部を経験で捉えます。ゾクリと心地よい感覚を味わい、ゆっくりと止めていた呼吸を再開するのです。

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十分です

その日に食べる分だけ釣れればいいのです。佐藤氏の嬉しそうな笑顔が十分ですよと言っています。
空も暗くなり、雨もぽつりと水面に落ち始めた所で記念撮影。今日は終了です。早めの撤収ですので、戻ったら久しぶりに焼こうかと話し合い下る事にします。普段は時間の都合もあり、手間もかかりますから刺身などが多いですが、久しぶりの焼き岩魚にちょっと興奮ぎみです。

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さっそく焼いちゃいますよ

戻ってきたらすぐに準備にとりかかります。じっくりと遠火で焼きます。以前マタギの方とご一緒してそれ以来お世話になっている方に、岩魚の焼き方を教えていただいた事があります。岩魚と火の間に手をかざし、「この温度をよく覚えろ」とマタギ直伝の岩魚焼きです。なかなか難しく思うようには焼けません。上手な先輩方がいらっしゃるし相場氏がほとんど焼いてくださったので、私は写真撮ってただけですが。
そして夕食の支度をし、楽しい夜へと時間は流れていきます。
食事にひと手間加えるのが源流会流。毎回登場する新鮮なトマトに、なぜか用意されている手打ちうどんセット。おもむろに打ち始める人見氏。焼き上がった岩魚にかぶりつき、グイッと一杯やる相場氏。楽しみはつきない。

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