朝日連峰荒川リベンジの旅

はじめての朝日連峰荒川

それは、突然の出来事だった。

それは、突然の出来事だった。私宛に一通のメールが届く・・・恐る恐るメールを開くとそれは、北関東源流会からの入会案内だった。
急なサプライズに喜びが込み上げるが、疑り深い私はもしや何かのドッキリかと思い、家の外にヘルメットをかぶってプラカードを持った怪しい人間がいるのではないかと、パンツ一丁だったことも忘れ、すぐにカーテンを開けて外を確認した。
そんな奴はいないと確認するやいなや今度はカーテンが開いていることも忘れ、その喜びを嫁に向けて体いっぱいで表現していた(パンツ一丁で・・・)。近くで冷静な目で見ていた中学生になる娘はそんな父の姿をみてドン引きしていたが、私はおかまいなしに騒ぎまくっていた。

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さて

入会させてもらったもののなかなか都合が合わず、参加を見送ってきたり、やっと都合がついて参加できると思ったら、直前になって大雨に見舞われ、あえなく中止を余儀なくされたりとフラストレーションはたまるばかりだった。
7月の三連休、やっと都合がつき、イベントに参加できる機会が訪れた。
もともと本三連休にて北源会のホームグランドとも云うべくS川への放流活動が予定されていた。しかし前週の台風の余波で山は大荒れ、林道が崩れ復旧に1か月かかると地元のメンバーから情報をいただいたことで放流活動は延期。再度計画を見直し、玉川支流の桧山沢釣行へと予定は変更された。わたしも慌てて下調べをし直したが、この桧山沢という沢、沢というにはおこがましいかなりの水量を誇る険しいところだ。それなりの覚悟で臨まなければ・・・・

週末の天気が気にかかる

あまり思わしくないようだ。日が変わるごとに予報を確認するが、一向に良くならない。むしろ降水確率は上がっていくばかりで木曜の時点では70%まで上がってしまった。予定日前日での降水確率も60%、正直あきらめかけていたが、先輩方の判断で、場所を安全が確保できる荒川に変更し、決行することになった。荒川を選んだのには他にも訳がある。実は1か月くらい前だろうか、北源会でこの川に一度入渓しているのだそうだ。私は都合が合わず参加できなかったが、その時はまだ雪渓がすごくて川が埋もれてしまい途中で断念したとか。つまり今回はその遡行のリベンジも兼ねていることになる。画してイベント名を「朝日連峰荒川リベンジの旅」と改名・・・いざ出発である。

車に揺られること4時間

ようやく荒川入り口の林道に入った。今のところ雨は降ってこない。慎重に車を走らせていると、途中何台かの車が駐車してある。いやな予感がしたが、とにかく車を走らせ、車止めまで急いだ。車止めについたとき、皆開いた口が塞がらなかった。そこには茨城ナンバ-の車が6台も止まっているではないか! 昨日からの先客に間違いないと肩を落とす。
どうする? 違う場所に変更するか?えっ今から?車の中に一瞬の沈黙ができたが、もともと日曜からの釣行で覚悟はあったし、放流活動が流れでこうなったわけだし、自然を満喫できればそれでいいじゃないかとポジティブ思考に切換え、準備を始めて入山に相成った。

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歩き始めて

しばらくするとゼンマイ小屋にたくさんのブルーシートとテント張られかなりの人が熟睡している様子・・・この人数はあの茨城ナンバーの方々に間違いない!
どうやら、登山道を整備しているボランティアの方々のようだ。我々の気も少し晴れ先を急いだ。後はあの目指すテン場に他のパーティーがいないことを祈るばかりである。
歩き始めて数時間、空も明るくなり始めたころテン場に着いた。「やった!!誰もいない・・」みんなの顔も一気にほぐれた。空を見ると雲がかかっているものの荒れる気配は見られない。急いで支度を済ませ渓へ降りる。
川に降りるやいなや、明さんが「桜井君やっていいよ」と言ってくれた。みんなは竿を出さない・・。「あれ?なんだ?どういうことだ?もしかして試されているのか?」
源流会初遡行で緊張&戸惑いだらけではあったがせっかくのお言葉に甘え、竿を出させてもらった。いつも、細沢で釣りをしていた私の仕掛けはあまりにも短く、スケールの大きい荒川には不向きだった。しかし、そのまま竿をだした、三度ほど流したとき、クンクンと短い仕掛けが引っ張られた。軽合わせで魚を走らせてから引き上げると、7寸ほどのイワナが顔をのぞかせた。あ~良かった。まさか三投で釣れるとは私も思ってなかったが、とにかく釣れた姿をみんなに見せられて私もひとまずホッとした。

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その後も

みんな竿を出す気配がないので私も竿をたたみ、魚をリリースして先を急いだ。歩いて程なくすると、鱒止めの滝が見えてきた。鱒止めの滝を巻くと、今度はまるで台風の目のような落ち込みの滝壺が現われ素晴らしい景色が続く。

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それでも足を止めない栄司さんに置いて行かれまいと、必死に食らいつく。
その後も30分程歩いただろうか、栄司さんの足が急に止まった。

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見ると両側が切り立った、通らずの淵が目の前の行く手を阻んでいる。前回来たときは、この通らずもろとも雪渓に埋もれ、その先に行けなかったとか・・・。そうこうしているうちにザックからザイルを取り出し、準備が進められている。どうやら泳いでここを渡るらしい。まず、丹羽さんがトップに立ちザイルを腰に括り付け深い淵に飛び込んでいった。奥が曲がっていて先が見えないが、どうやら岸についたらしくザイルを明さんがつかみ取り、思い切り引っ張ると一直線のザイルガイドが出来上がった。「かっこいいー!!」さすがに手慣れたものだ。
ザイルを便ってみんな躊躇なく次々に泳いでいく。私は最後にザイルに引っ張られて岸に上げてもらった。まだ雪代の混ざる水ではあったが、日が出てきたことも功を奏し体を凍らせるほどではなく、むしろ泳ぎ初体験の私は感動で胸が熱くなり、雄叫びを上げたいくらいだった。

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通らずの淵を抜けると

あたりが急に開けて雄大なスケールの360°大パノラマが我々を迎え入れてくれた。また、幸運にも空は晴れ渡り、私もみんなもここぞとばかりにカメラのシャッターを切り撮影となっていた。源流に来るもう一つの理由がこの絶景を体全体で味わえるからだと確信した。

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写真撮影も終わり、いよいよ本題の釣りを開始した。朝一の釣りでイワナを掛けたことをはじめ何だか今回は爆釣を予兆させる雰囲気があった。ここから先頭を行く明さんが早くも竿を出す。どうやら竿を出すポイントを決めていたらしい。深みに仕掛けが流れ着いた瞬間、竿が弓なりに曲がる。さすが!第一投でいきなりかかった。抜き上げたイワナはパッと見軽く尺はありそうだ、やっぱり予兆通り今日は爆釣に違いない!みんなも続いて竿を出し、良型のイワナを次々と上げる。

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私も急いで長仕掛けに切換え竿を出した。岩陰に隠れて裏側の深みに投げ込むと、すごい勢いで引っ張られたが、すぐに元に戻ってしまった。竿を上げるとエサだけ取られていた。もう一度エサを付けて流し込む。「またキタ!!」今度は逃がすまいとじっくりエサを食わせて頃合いを待って一気に引き上げた。これもいいサイズ!!さすがにここまで来ると型もよく、みんなが釣り上げるのもほとんどが9寸以上だった。

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これだけ川のスケールがでかいと魚もさぞや大きくなるのだろう。また、ここまで上流に来れば魚影もかなり濃い、爆釣なはずである。みんなで代わる代わる釣りを楽しんだ。
釣り上がっていくと時折川の水が一気に濁り、そしてまた、きれいになっていく。少し気にはなったがみんな釣りに夢中でそんなことは後回しと言った感じだった。

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昼ぐらいまで釣り上がっただろうか

奥にとんでもなく大きなスノーブリッジが現れた。デケー!」この川の冬の雪深さを物語る堂々たる姿に圧倒され、近くに行くと飲み込まれてしまいそうで、それ以上足が先に進まなかった。近くには崩れた様子の雪渓もある。「そうか!さっきの濁りは雪渓の崩れか!?」安全を配慮し、ここまでとしてスノーブリッジの前で記念撮影。そしてテン場に戻ろうと川を下った。

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テン場についてからは早速宴会が始まる。

 持ってきたつまみとビールでまずは乾杯!やっと酒にありつけた。この一杯がたまらない。酒を飲みながら焚き火を起こし、イワナの枯らし焼きも作り始まった。

今までの経験からするとこれが出来上がるのは明日になるだろう。枯らし焼きを育てながらその他の料理に取り掛かる。千葉シェフがここぞとばかりにナイフを持ってニヤリと微笑んだ。私は何だか殺気を感じ千葉シェフから離れ横目でイワナを裁くのをみていた。するとあっという間に綺麗に三枚に下ろしお皿の上にもりつけられた。きっといつもやっているのだろう、なかなかのナイフさばきだった。三枚に下ろしたイワナが刺身、から揚げとどんどん山の恵みフルコースに生まれ変わる。そこに酒も入ってほんと最高の気分だ。

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実は今回の釣行で私にはもう一つの目的があった

それは北源会に入って初めての参加で、まず自分という人間をみんなにもっとアピールすることであった。この日の宴で歌が好きな私は、長淵剛の「トンボ」をギターに見立てたフライパンを片手に熱唱する予定だったが、どうにも言い出すタイミングが掴めず、結局歌えずに終わってしまった。せっかくアピールしようと思っていたのに何とも意気地のない奴だと自責の念にかられたが、代わりに家での嫁とのちょっとしたエピソードを「アナと雪の女王」ミュージカル風にやってみせると、ややうけをいただけたので、まあ今回はよしとしよう。長淵剛は次回の為にとっておこう!そんなこんなで宴会は夜更けまで続いた。

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朝起きて、空を見上げると、空は雲一つない青空だった。出発前の天気予報が嘘のようだ
結局天気にも恵まれ、釣りも宴会も大満足の二日間・・・。本当に楽しい時間を過ごさせてもらった。
帰国の途に就きニュースを見ると案の定、東北地方の梅雨明けが発表された。
最後に今回の釣行は自分にとって未知の体験ばかりでした。本当に貴重な体験をさせていただき、また、最高の仲間とも出会えたことに心から感謝しております。

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今後は、北関東源流会の一員として誇りを持ち最高の仲間と、「源流への旅」に参加して行きます。
以上、桜井武人でした。

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  • メンバー : 人見栄司 人見明 千葉憲一 丹羽秀樹 桜井武人
  • 文    : 桜井武人
  • 写真   : 人見栄司・明・桜井